ヘルスケアビジネスの新戦略 ~加藤浩晃の頭の中~

未来の医療はどうになっていくのか、そして医師の未来はどうなるのか。AIやIoTなどの第4次産業革命のテクノロジーによって医療現場は『医療4.0』として大きく変わります。加藤浩晃が未来に向けて考えていることを書くブログです。

医療・ヘルスケア新規事業を立ち上げるときに知っておきたい3ステップ!

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2017年5月に厚生労働省を辞職した後から、6つの企業と計8つの医療・ヘルスケア新規事業に関わらせてもらっています。(2017年12月現在)

8つの新規事業を様々なフェーズで育てていく経験をしていく中で、新規事業が事業として成長するためには3つのステップを意識することが必要だということをなんとなく感じ出してきました。

その新規事業の成長の3ステップというのは
①仮説、②実証、③拡大という3つの段階です!

それぞれについてちょっと詳しく話していこうと思います。


<①仮説>

まず「①仮説」では、何よりもその事業・サービスが「誰の」「どのような」ことに対して必要なもので、喜んでもらえるかを明確にする必要があります。

よくある失敗例がテクノロジー先行型で、技術があるからサービスや事業をその技術をもとに実装してみようとしてしまうことです。
例えば、Deep Learningの技術があって、医療用画像(例えば眼底写真)があるから画像の診断ソフトウェアを作っちゃおうみたいなノリで作っちゃうやつです。
実際、眼底の自動診断ソフトウェアができたら「誰の」「どのような」ことを解決して喜んでもらえるのか。

眼底写真の自動診断ソフトは眼科医には必要ないし、では眼科以外の医師はどうかというと、あったらうれしいけどそんなに頻繁に使わないって感じなんです。あえていうなら糖尿病内科で眼底カメラを持っているところだったり、健診クリニックですが、必要としてくれる対象者はぐんと少なくなってしまいます。

「誰の」「どのような」ことを解決するのかがないものは、求められているサービスではないので事業としては成り立ちません。

ここまでの話は医療・ヘルスケア分野の話ではないのですが、医療・ヘルスケア分野の場合は、この「誰の」「どのような」に加えて、
・「医療現場」の現状に即しているか
・現在の「医療制度」で問題はないか
・「医療政策」で言われている世の中の流れとあっているか
の3点にも注意を払う必要があります。

一見、良さそうなサービスモデルであっても、医療現場や医療制度、医療政策とあっていないと事業としては成り立たなかったり、尻すぼみになってしまいます。

例えば、患者さんの集客に困っているクリニックがあって、そこに患者さんを送客することでキックバックをもらうというビジネスモデルを考えたとしても、
保険診療のクリニックの場合は「療養担当規則」の違反になりますし、
送客するためのサイトなどを作って個々のクリニックに送客するとなると、2017年に改正された医療法の広告規制に引っかかる可能性もあります。

この①仮説でする作業としてはまずはパワーポイント作成です。

よく行政で使われているようなパワポ1枚でまとめる「ポンチ絵」と呼ばれるものを、上記
・「医療現場」の現状に即しているか
・現在の「医療制度」で問題はないか
・「医療政策」で言われている世の中の流れとあっているか
という3点を確認しながら、「誰の」「どんなこと」を解決するかに意識して1枚作って、マネタイズのためのお金の流れを大まかに書き込みます。

そして後は背景となる情報をさらに集めたり、ヒアリングをしたりしながら仮説をより洗練させていきます。

ここでのポイントはそのお金の流れはあくまでも大まかなもので大丈夫だし、1パターンでなくてもいいということです。

現在存在しないビジネスモデルを考えようとしているものなので、細かいところが確定されなくて当然ですし、むしろ細部のところは問題ないです。
ざっくり、誰からお金をもらうのかというところだけでもいいかもしれないです。
このマネタイズポイントですら、途中で変わってしまうことがあります。


<②実証>

実証では①の仮説を実証実験を通して確認していくフェーズになります。

①出できた
「◯◯には△△という問題があるから、✕✕という方法で解決する」
という仮説に対して、実際に試してみます。

ここで押さえておきたいポイントは、できるだけ実際の場面と同じような感じで試すということです。
例えば将来は毎月課金をしてサービスを使ってもらおうと思っているのに、この実証実験では無料でサービスを行うということは本来の実証実験のフェーズでやることではありません。


無料で集まってきた人と、実際に課金をして集まる層では違う可能性がありますし、それだと、実証実験をしても「実際課金をしたら来ないかも」とかいうような「~だったら」というところが拭い去れず、また追加の実証実験が必要になります。

もちろん段階を踏んで、ヒアリングしたニーズがあるか確認するために無料→有料と2回実証実験をするつもりなら問題ありません。

実証実験のフェーズでは「赤字」になることを痛みと感じずにやることが大切です。
ただし、赤字を垂れ流すのではなく、一定予算を先に決めて、その中で赤字でもやるという「攻めの赤字」です。

②実証をやることによって、①仮説で作ったポンチ絵にお金の流れ必要な投資などを具体的な数字を持って書き加えることができます。

ここで注意したいことがあって、②実証で出てきた結果は「ありのまま」に考察をして受け止める必要があります。
どうしても自分が作った①仮説がかわいいので、少し歪んだ考察をしてしまって①仮説が正しいと証明することにやっきになってしまう場合があります。

本当はモデルとして成り立っていないのに、勝手な解釈でOKとしてしまうような。
しかし、それでは②実証をした意味がありません。

②実証では①仮説でのモデルがうまく行かなかった場合もそれが大事なんです。

「実際にやってみるとわかることを知る」ために②実証ではある一定の「攻める赤字」を行います。


<③拡大>

そして最後が③拡大です。

②実証で実際と同じような感じに限りなく近く実証実験をして、マネタイズとしても成り立つということがわかれば、投資をしてフィールドを拡大していくことになります。

その際に、他企業との競争や、チームのメンバーが増えると生じるマネジメントの問題が出てきたりします。

実証実験で確認したモデルを着実に面として広げていきます。


こうやって一旦まとめてみましたが、まだまだ自分も医療・ヘルスケア新規事業のプレーヤーで、日々考えながらどんなことに注意しながらやったらいいのか考え続けています。

ここでの考えはまだまだ未完成ですが、
少しでも自分の経験が医療・ヘルスケア新規事業プレーヤーの方々のお役に立てればと思っています!!